限局して発症するエナメル質形成不全(MIH)とは?
●MIHとは
一本以上の第一大臼歯と切歯に限局して発症するエナメル質形成不全のことです。
従来知られてきた遺伝性のエナメル質形成不全や、全身疾患、歯のケガ、乳歯のむし歯などによって起きたエナメル質形成不全とは異なる疾患です。
●まず、エナメル質とは
エナメル質は歯の一番外側を覆っている表面のかたい組織です。その中の象牙質や歯髄を守っています。
●エナメル質形成不全とは
歯のエナメル質が正常に作られずに、歯が
生えてきてしまうものです
●そしてMIH
MIHのMとは臼歯(Molar)、Iとは前歯(Incisor)、
Hはエナメル質形成不全(Hypomineralisation)
一本以上の第一大臼歯と切歯に限局して発症するエナメル質形成不全のことです。
発症率は10人に1人といわれています。
●MIHの特徴
歯の変色や、実質欠損が主。著しい知覚過敏を示すこともあります。
通常、複数歯に発症するエナメル質形成不全は、左右対称に現れます。
症状が似ていることが多いが、MIHでは左右非対称なことが多いといわれています。
●MIHの原因
乳幼児期に起こったさまざまな要因との関連が疑われてきましたが、おもなものとしては
喘息や肺炎,呼吸器感染,中耳炎,扁桃腺炎,水痘,乳幼児期のアモキシシリンの投与,母乳中のダイオキシン、妊娠中の喫煙などがありますが,どれも因果関係が明確になったものはなく、最近では血清または血漿中の25-ヒドロキシビタミンD濃度の低下も原因として疑われています。
…が、原因ははっきりしていません。
●エナメル質形成不全とう蝕を見分けるポイント
①色調の異常がある
白色~褐色の変色がみられます。変色の位置に一貫性はなく、大きさも粒大から歯までさまざま。
②粗造な部分がある
歯の表面の一部あるいは全部が光沢を失
い、滑らかではありません。場合によっては外来性の色素沈着をおこすことがあります
③歯質が欠損している
実質欠損の位置と大きさに一貫性はありません。
一般的には歯の萌出時すでに実質欠損が認められることが多いですが、なかには萌出時に変色歯だったものが、一定期間経過後に変色部が崩落して実質欠損に移行することもあります。
④臨蝕検知液で濃染されない
う蝕とは異なり、エナメル質形成不全の実質欠損は検知液に染まりません。ただし、実質欠損部に形成されたプラークに濃染されることがあるため、染める前はしっかり清掃をすることが大切です。
⑤通常,う蝕罹患しにくい部位に変色,実質欠損部位が存在する
歯の唇面中央や、第一大臼歯(6番)の頬側平滑
面や咬頭などです。
⑥第一大臼歯だけに大きな修復物がある
例) 他の歯はう蝕や修復物が少なく、口腔衛生状態が良好な患者さんの第一大臼歯(6番)だけに咬頭を含んだ大きな修復が施されている場合など、疑われます。
★患者さん及び療育者への説明ポイント
①咬耗やつねに破折の危険にされされている
歯の変色部は、破折や咬耗がいつ起こってもおかしくないです。
②う蝕に罹患しやすい
罹患部位は歯質の石灰化が不十分。清掃困難な場合も多く、容易にう蝕が発生します。
③う蝕の進行が速い
歯質の石灰化が不十分なために進行が速いです。
④長期の通院が必要
歯列咬合の完成までは成長に応じた暫間被覆と対処療法を行い、補綴治療は成長が完了した後に行うため、長期にわたる定期的な通院が必要です。
⑤家庭でのケアがもっとも大切
⑥定期検診を怠ってはならない
このように、形成不全の歯は虫歯になりやすく、進行がはやいのです!
定期的なケアや、歯科医師や歯科衛生士によるチェックが必要不可欠ですね(^^)
もしかしてこの歯かな?!と気になったらお気軽にお尋ねください。
参考文献 デンタルハイジーン2020年12月号
UMEMOTO