電車に乗ると呼吸が荒くなり、冷や汗が出て、胸がドキドキして苦しくなる。
心臓が止まりそうになって倒れてしまい、病院に担ぎ込まれて診察を受けると「特に異常ありません」といわれ、いつの間にか元の正常な状態に戻っている。

これが典型的なパニック発作であり、このような発作を繰り返す病気がパニック障害です。
この病気は心配性な方の恐怖感が引き起こすと考えられます。

歯科治療時にパニック発作が生じることもあります。主に下記の3つのパターンです。

1.歯の治療の痛みでドキドキし、心臓が止まりそうになる
2.治療イスを倒すときに気を失いそうになる
3.歯を削る器具から出る水がのどに溜まり、窒息しそうになる

パニック発作は恐怖感から生じるため、恐怖感を緩和する有効な対策が必要になります。

まず1番目は、痛みに対する恐怖心から死んでしまうかもと焦っている状態です。

2番目は、墜落して死んでしまいそうな感覚に囚われた状態です。
単にチェアが倒れるだけなのに、パニック障害の患者さんにはこのような恐怖がよくみられるのです。

対策として、ゆっくりと少しずつチェアを倒していき、実際に墜落するわけではないことを実感していただきます。
このような練習を重ねることにより、自信を持って治療に臨んでいただけるようになります。

3番目は、窒息して死んでしまいそうな感覚です。

治療中に口の中に水が溜まると息ができなくなり、苦しくなってしまうのです。
通常は口の中に水が溜まっても、自然に鼻で呼吸するものですが、口の中に水が溜まると焦ってしまい、鼻で息をすることができなくなって苦しむわけです。
鼻呼吸が上手くできなくても、口の中に溜まった水を飲み込んでしまえば口で息ができるようになるはずですが、焦っているとできないようです。

この場合は治療前に鼻で息をする練習をします。次に診療チェアを起こしたまま、座った状態で口に水を溜めてもらい、鼻で息をする練習をしてから、チェアを倒した状態で同じ練習を行います。このように段階的に練習をすることで自信が付き、実際に治療を受けられるようになるのです。

パニック障害の最初の症状は、ある日突然やってくる「パニック症状」です。
恐怖感、動悸、呼吸苦、めまい、発汗、吐き気といった症状が次から次に生じ、死にそうな感覚に囚われます。
パニック発作の原因は、生まれつきの遺伝要因、幼少期の経験、発達の問題、ストレスや生活上の問題などが複雑に絡み合って生じると考えられています。
また、パニック発作の諸症状は自律神経症状であるため、脳内の神経伝達物質(セロトニン、GABA)の異常があることも判明しています。

一度パニック発作を体験すると、「また同じことが起こるのではないか」と心配になります。
歯科治療の際に恐怖を感じると、以前のパニック発作の記憶がよみがえります(予期不安)。
予期不安が生じると、その状況を避けるために回避行動をとることになります。

診療チェアの上でじっとしていなければならない状況は閉所恐怖につながり、パニック発作が生じやすくなります。
このような恐怖感を「広場恐怖」といい、パニック障害に特徴的に見られる症状です。
狭いところなのになぜ広場なのかと不思議な気がしますが、古代ギリシャで広場に人がひしめき合って集会が行われたことに由来する用語なのです。
つまり、広場から容易に抜け出すことができないために恐怖感を覚えるということです。

ここを押せばパニック障害を抑えることができる、効果的なツボがあります。

利き手でない方の中指の爪の生え際と第一指関節の間を、先を引っ込めたボールペンで強く押します。
30秒以上押し続けると、症状が軽くなっていきます。

MAKIHIRA

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